2022.10.20
24時間換気システムは戸建住宅長寿命化の“要”。基礎的知識から注意点について
突然ですが、皆さんは「24時間換気システム」というキーワードを聞いたことはありますか?
実は、住宅を長持ちさせるためには欠かせない設備です。
しかし、まだまだその存在の重要性を知らない人も多いでしょう。
そこで、今回はこの「24時間システム」について基礎知識から必要な理由、導入する前に知っておくべき注意点についてお話しします。
これから住まいづくりを始める人は、ぜひ参考にしてください。
・湿度を調節でき、新鮮な空気で満たされた“快適な生活”を実現できます。
・私たち“エムズホーム”は、「愛着の持てる住まいづくり」をコンセプトに、高性能でスタイリッシュな住宅づくりを行なっています。
新築住宅への導入は法律で“義務化”されています
「24時間換気システム」はあまり聞き馴染みがない言葉かもしれません。
しかし、建築基準法でも義務化されている住宅には欠かせない設備機器です。
元来、日本の戸建住宅において、換気が重視されていたのは湿気や臭いが気になるキッチンやバスルーム、トイレ、洗面室だけでした。
しかし、1990年台に入り、日本で“シックハウス症候群”を発症する人が多発し、改めて換気の重要性が見直され始めたのです。
シックハウス症候群とは、建材の接着剤や塗料に含まれる揮発性化学物質が原因で、めまいや頭痛、喉の痛み、吐き気などをもよおしてしまう健康被害です。
主な原因物質は、ホルムアルデヒドやクロルピリホスなどのVOC(揮発性有機化合物)とされてきましたが、最近ではこれらの化学物質に限らず、ダニやカビなどの生物学的要素や、空気がこもっていることで引き起こす圧迫感などの心理的要因も原因とも言われています。
(参考:愛知県衛生研究所|衛生化学部 生活科学研究室|シックハウス症候群)
このシックハウス症候群の問題が深刻化したことを受け、国は2003年7月に建築基準法を改正し、「内装材の制限」、「換気設備設置の義務化」、さらには「最低換気能力」を定めました。
(1)規制対象とする化学物質
クロルピリホス及びホルムアルデヒドとする。
(2)クロルピリホスに関する規制
居室を有する建築物には、クロルピリホスを添加した建材の使用を禁止する。
(3)ホルムアルデヒドに関する規制
① 内装の仕上げの制限 居室の種類及び換気回数に応じて、内装仕上げに使用するホルムアルデヒドを発散する建材の面積制限を行う。
② 換気設備の義務付け ホルムアルデヒドを発散する建材を使用しない場合でも、家具からの発散があるため、原則として全ての建築物に機械 換気設備の設置を義務付ける。
③ 天井裏等の制限天井裏等は、下地材をホルムアルデヒドの発散の少ない建材とするか、機械換気設備を天井裏等も換気できる構造とする。
つまり、国としてもシックハウス症候群の重要な対策方法として、「換気」を重要視しており、それを反映した法改正を実施したのです。
また、建築基準法施行令 第20条の8では、居室における換気回数も定めています。
このように、新築住宅において24時間換気システムは、施主や設計者個人の判断で“いる・いらない”を判断するのではなく、必ず設置しなくてはいけません。
リフォームは義務化対象外
「今住んでいる住宅には付いていない」と不安に感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、現在の法規では既存住宅は義務化の対象ではありません。
ただし、確認申請を伴うような大掛かりなリノベーションの際には、現行の法規に適合させなくてはいけないため、必然的に24時間換気の取り付けが条件となります。
また、設置義務の対象でなくても、24時間換気システムを設置するメリットは大きいため、法律関係なしに導入を検討する方が多いのも事実です。
24時間換気が住宅に必要な3つの理由
24時間換気のメリットは、何もシックハウス症候群対策だけではありません。
その他にも、いくつかの面において住む人や住宅そのものにとっての利点があります。
では、「24時間換気が住宅に必要な理由」について詳しく解説していきましょう。
その① 湿度を調節して結露を防ぐため
近年、省エネの観点から“高気密・高断熱”をコンセプトとした住宅が増えており、室内の気密性はどんどん高まっています。
空調効率を上げて環境負荷やコスト負荷を軽減できるため、高性能住宅の基本です。
しかし、一方で気密性が高まれば、室内に長時間人がいることで湿度は上昇し、寒い冬場には外気温との差によって、結露の原因につながります。
最近の新築住宅は壁内に十分な断熱材が入れられており、開口部も断熱仕様のケースがほとんどですが、どうしても経年劣化による断熱材摩耗などによって、内部結露を完全に防ぐことは困難です。
ただし、24時間換気を稼働させておくことで、室内の空気が常時入れ替わり続けるので、湿度が調節されて結露のリスクを抑制できます。
内部結露を防止できれば、カビの発生やシロアリ被害を未然に防げるので、家の長寿命化にとって欠かせない要素と言えるでしょう。
その② 家族の健康を守るため
先ほど、シックハウス症候群について解説しましたが、換気を継続的に行えば、ハウスダストや様々な化学物質、アレルゲン物質も排出できます。
化学物質過敏症や各種アレルギーを持っている人にとって、過ごしやすい住環境が整うのです。
「でも、換気をしたら外部から花粉などが室内に入る混むのでは?」と心配になる人もいるでしょう。
しかし、各メーカーでは換気口に取り付ける専用フィルターを用意しており、これを取り付ければ、屋外のホコリや花粉をしっかりシャットアウトしてくれるので安心です。
その③ 気持ちの良い生活を送るため
天気の良い日に窓を開けて外の空気を吸い込むと、清々しい気持ちになりませんか?
これには科学的根拠があるとも言われており、一部の研究機関によると「ストレスホルモンの減少」や、「血圧、心拍数の上昇抑制」に効果的という説も発表されています。
また、24時間換気によって料理臭やペット臭、体臭などの気になる臭いがこもらず、常にフレッシュな空気に囲まれることで、気持ちの良い生活が実現します。
24時間換気の種類は?
「24時間換気」と言っても、その換気性能のレベルや方法には、いくつかの種類があります。
(引用:Panasonic|24時間換気システム 戸建住宅用)
今まで住宅の場合は、コスト面から「第三種換気方式」を選ぶことが一般的でしたが、住宅の気密化が進んだことによって、給気と排気とも機械換気の「第一種換気方式」を選ぶケースも増えています。
なぜなら、第三種換気方式は給気を自然給気でまかなうため、住宅の機密性能によって給気量が変わってしまい、給気不足となればうまく室内の空気も排出できないためです。
一方で、第一種換気方式はどちらも機械制御となるため、室内環境に関わらず、計画的かつ確実に空気を入れ替えられます。
24時間換気は“家の長寿命化”における重要ポイント
近年、住宅に関する国の施策として積極的に進められているのが、“長期優良住宅化”です。
2008(平成20)年に長期優良住宅の普及の促進に関する法律が制定され、その中では長期にわたって良好な状態に保つために維持保全や計画作成がされた住宅を、「長期優良住宅」に認定するとしています。
(参考:国土交通省|長期優良住宅のページ)
この認定を受けるにあたり、防湿やシロアリ防止などの劣化対策が認定条件に含まれており、結露の抑制もそれら劣化対策と大きく関係します。
なぜなら、壁内や床下、天井裏に結露が発生すれば、躯体の腐食やカビ発生を引き起こし、ひいてはシロアリ被害を拡大することにもなりかねないからです。
建築基準法で導入することが定められているため、“仕方なく”設置するという人も多いですが、既存住宅を含め、家を“長期優良住宅化”するためには、とても重要な役割を担っているのです。
24時間換気の家に住む際に知っておくべき注意点
「24時間換気」について調べていると、以下のようなネガティブなキーワードを見かけます。
- 「電気代が高い」
- 「足元が寒い」
- 「音がうるさい」 …
しかし、これらは24時間換気についての知識が十分でないからです。
そこで、ここでは導入前に知っておくべき注意点や疑問点、その対策について解説します。
その① “電気代”を気にしすぎて電源を切らない
「24時間換気扇を稼働したままでは電気代がもったいない」といって、電源を切ってしまう人がいます。
これは、最もやってはいけないことのうちの一つです。
電源を切った時点から、空気の排出量は激減し、汚染度や湿度はどんどん上昇してしまいます。
それによって、結露などを引き起こす可能性は否めません。
では、24時間365日稼働し続けると、どのくらいの電気代負担になるのでしょうか?
Panasonicの試算によると、最も機械式の割合の多い第一種換気方式の2階建て戸建住宅において、600〜700円程度の電気代となるとされています。
(参考:Panasonic|24時間換気システム 戸建住宅用)
自然給気に頼る第三種換気方式にすれば、それ以下ということです。
できるだけ電気代を削減したいと考える人も多いですが、24時間換気がもたらすメリットを鑑みれば、決して高い代償ではないのではないでしょうか。
▶︎関連コラム:戸建の電気代の平均より下回る方法|家づくりがポイント
その② “寒い”と感じたら自然給排気口を確認
壁につける自然給排気口やパイプファンは、は、壁に最低直径150mmほどの穴を開けて取り付けます。
そのため、そこから隙間風が入って足元が寒くなるのではと懸念する人も多いでしょう。
しかし、給気が十分でなければ計画的な排気ができず、24時間換気システムを設置している意味がありません。
各メーカーでは、風量調節機能付きのものや、正面パネル付きのものなど、直接外気が足元に当たらない設計になっているものもあるため、冷気が心配な方はそれらを選択してください。
その③ “うるさい”原因はメンテナンス不足や設定ミス
既に24時間換気システムを導入した人の中には、「夜間に音が気になって眠れない」「カタカタとした振動音がうるさい」などの感想を持つ人も少なくありません。
これは、機器やシステムそのものに問題があるのではなく、メンテナンス不足や設定ミスが直接の原因の場合がほとんどです。
例えば、定期清掃をしなければ、フィルターが目詰まりして機器に負荷をかけてしまいますし、家の大きさに対して過度な設定をしていれば、過剰に稼働するため、運転音が大きくなります。
通常、設定は設置時点で施工者が適切な状態にするのが一般的ですので、ご自身で勝手に設定を変えないようにしましょう。
どうしても運転音が気になってしまう場合は、一度施工者に設定を見直してもらうのもおすすめです。
その④ 定期清掃が効果を発揮するポイント
先ほど、メンテナンス不足が異音を引き起こすとお話ししましたが、機器が持つ性能をフル活用するためには、フィルターなどの定期清掃は欠かせません。
しかし、ある調査によると、なんと24時間換気システムのある家に住んでいる人の中には、何年もの間「一度も掃除したことがない」と回答した人が半数以上というデータも出ています。
(引用:レタスクラブ)
これでは性能を100%発揮できません。
2週間に一度程度フィルターの清掃をし、年に一回フィルター交換をするのが理想的です。
ただし、メーカーによって清掃スパンや方法は異なりますので、必ず説明書などで詳細を確認してください。
高気密高断熱住宅には「熱交換型」がおすすめ
24時間換気と高気密高断熱住宅の関係性について考えてみると、ここである疑問が浮かびます。
「気密性を高めるのに、24時間空気の入れ替わりがあると暖房効率が下がらないの?」
確かに、気密性を高めるということは密閉度を高めるということです。
これと、常に空気が出入りしているということは、相反することのように思うかもしれません。
この疑問を解決するのが、「熱交換型換気システム」です。
熱交換型換気システムとは、排気する際に空気の熱を一度回収し、外気を取り込む際にその熱を戻す仕組みです。
この仕組みによって、換気による空調負荷が軽減できます。
また、冬場には給気の際に冷たい空気で寒さを感じるということがありません。
(引用:Panasonic|気調システム®)
このシステムを持つ24時間換気システムにすれば、気密性が高い住宅においても空調効率を損なわず、常に新鮮な空気で満ちた快適な住宅になります。
まとめ|24時間換気で快適な暮らしに
24時間換気システムは、新築住宅において建築基準法でその設置が義務付けられています。
そのため、「あって当たり前」「本当は必要ないけど仕方なく導入する」と考える方も多いでしょう。
また、そもそも24時間換気システムの存在すら知らない人もいます。
しかし、家を長持ちさせたり快適な暮らしを維持するためには欠かせない設備です。
新築戸建住宅をの建設を検討する際には、この24時間換気システムについてもじっくり考えてみてください。
広島・島根で“高性能 × スタイリッシュ”な家を建てたい方はエムズホームにご相談を
私たち“エムズホーム”は、広島県三次市を拠点に創業1967年から“愛着の持てる住まいづくり”をモットーに、「温熱環境」「光・空気環境」「デザイン性」を重視した高性能住宅の設計施工をしております。
高性能住宅は、省エネで光熱費を抑えられるだけではなく、地球温暖化対策につながるなど、環境問題へも寄与できます。
一生に一度の大きな買い物である「マイホーム新築」だからこそ、“高性能 × デザイン”の両方にこだわってみませんか?
広島県・島根県で家を建てるなら、エムズホームにご相談ください。