家づくりガイド

2023.10.20

注文住宅

木造在来工法とは?ツーバイフォーとの違いは間取りや寿命に影響する?

木造在来工法とは?ツーバイフォーとの違いは間取りや寿命に影響する?

木造住宅を新築する際、多くの方は意識することなく在来工法での家づくりを計画されるのではないでしょうか?在来工法は木材の特性を活かした日本の気候に合う建て方で、古くから親しまれてきました。

新築に際には在来工法のメリットとデメリットや、ツーバイフォーとの違いを知り、家族の理想の家にとって最適な工法を選ぶことが大切です。

この記事のポイント
在来工法とは日本の気候に合った木造住宅の工法です。
間取りの自由度が高く、家族のこだわりが活かされる良さがあります。
スケルトン・インフィル工法を採り入れることで、間仕切りが入れ替えがしやすくなりより間取りへの融通性が高くなります。

 

 

在来工法とは

在来工法で建築中の住宅

在来工法は、コンクリートの基礎に柱を建て、梁を渡して住宅の要となる骨組みの部分を構築する木造軸組工法を指す言葉です。日本には古くから続く伝統構法がありますが、現在では昔のように太い梁や柱を使わない在来工法が主流になっています。

伝統構法では、地面に置いた石の上に柱を立てて地面と建物の間に空間を作り、地震の揺れを伝えないことと、柱や梁を太くすることで地震の揺れに備えていました。

一方、在来工法は、柱と梁で地震の揺れを受けとめるだけではなく、適切な場所に耐力壁を設けることで、耐震性を高めています。耐力壁とは、筋交いという斜めの木材の入った壁のことです。

 

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在来工法のメリット

この事例を詳しくご覧いただけます。
>>>安芸高田市吉田町の家

現在、日本の中で最も多い住宅は木造住宅です。木造住宅の中で最も多い工法は在来工法です。古くから親しまれているとはいえ、ツーバイフォーやSE構法なども出てきている現代においても、在来工法がもっとも多く建築されている理由はメリットが多いからではないでしょうか?

間取りの自由度が高い

耐震の為の柱と梁、耐力壁の位置には設計上の制限がありますが、基本的に間取の自由度が非常に高いことが在来工法の大きな魅力です。吹き抜けやスキップフロア、ダイニングキッチンと繋がる広々としたキッチンなど、憧れの間取りへの想いが叶います。

特にスケルトン・インフィル工法を採り入れると、構造と内装部分が分離される為、より間取りの自由度が高くなります。

構造と内装部分が切り離されていることによって、間仕切壁の入れ替えがしやすいので、生活様式の変化に大規模な工事をすることなく対応できます。また、水道などのメンテナンスも容易にできます。

窓の自由度が高い

この事例を詳しくご覧いただけます。
>>>三次市十日市東『trip』

 

窓には陽射しと風を採り込む・外部の景観を採り入れ室内を彩る・プライバシーを確保するなどの役目があると共に、内装や外観の雰囲気にも影響します。在来工法の家では、耐震面から最低限の制限はありますが、その範囲内で窓の位置やサイズを自由に決められる良さがあります。

暮らしの変化に対応する寿命の長さがある

家は長く住む場所です。そしてその長い年月間には家族の暮らし方は変化していきます。子育てに備えて新築した家では、子どもの成長に合わせて、日々暮らしは変化していきます。やがて子どもが独立する、家を建てたご夫婦が現役からリタイアする、結婚した子供家族と一緒に暮らすなど、大きなライフステージの変化も訪れます。

在来工法の家は、小さな変化にも、大きな変化にも対応しやすいという良さがあります。例えば、新築時にまだ子どもが幼ければ、遊び部屋として使えるよう2つの出入り口と複数の窓がある広めの部屋にし、子どもがプライベートな空間を求めるような年頃になったら、間仕切壁を設けて2部屋に分割するなど、手軽なリフォームで小さな変化に対応できます。

また、子供夫婦といっしょに暮らす二世帯住宅にするというような場合には、増築することもできます。さらに、新築から50年以上が経過し、家を建てた時には隣地には家がなく、日当たりも風通しも良かったのに、3階建ての家が建ってしまい、日当たり、風通しに加えてプライバシーも確保できなくなってしまったというような場合には、スケルトンリフォームという骨組み部分だけ残す大規模なリフォームをすれば、間取りや窓の位置などを変えられるので、暮らしやすい環境の家に変えられます。

暮らしの変化への対応力の柔軟さを考えると、在来工法の家は物理的な耐用年数だけではなく、生活の質を維持するという面からも寿命の長い家であると言えます。

建築資材にかかる費用が抑えられる

在来工法の家は最も多く建てられていることから、在来工法の家に使う建築資材は大量に流通しています。昨今のウッドショックやウクライナ紛争などによる変化はありますが、SE構法や伝統構法の住宅に使われる建築資材より費用を抑えられます。

在来工法のデメリット

在来工法のデメリット

良い面が多い在来工法での家づくりには、デメリットもない訳ではありません。後悔しないようにあらかじめデメリットについても確認しておきましょう。

家づくりの計画から完成までの時間がかかる

在来工法の家は何もないところから計画を始めます。その為、プラン作成から設計までの期間には、家族と施工を請け負う会社の間で、何度も打ち合わせをします。

また、ツーバイフォーやSE構法のような規格されている集成材を使わない為、工期も長めです。全て合わせると半年から1年という時間がかかります。その分、妥協のない家族の希望を満たした家が完成するのですが、時間的に余裕がないという人にはデメリットになってしまいます。

住宅の品質が施工先によって変わる

在来工法では自由度が高い分、デザインに関しても住宅性能に関しても非常に幅広い可能性があります。それは同時に、施工をする会社によって結果と仕上がりが変わるということでもあります。

設計士の技術とセンス、大工や職人の腕の違いが、全て住宅の品質に関わってきます。その為、極端に言えば、在来工法の家は施工の依頼先によって完成する家の運命が変わります。

 

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ツーバイフォーとは

ツーバイフォー住宅の建築現場

北欧で生まれた「四方の壁と天井と床の6面で地震の揺れに耐える構造」である木造壁式工法のうちのひとつです。この他にツーバイシックスやツーバイテンなどもあります。どれも6面で地震の揺れに耐える構造であることは共通していますが、構造用製材のサイズの違いによって名称が変わります。

ツーバイフォー工法では、主に6種類の規格化された枠組壁工法構造用製材を使用します。それぞれの部材は、日本農林(JAS)規格によって厳しく品質がチェックされ、使用する箇所ごとに製材品の種別なども定められています。

引用:一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会

構造用製材とは、国際的な規格に沿って作られる構造用合板のことです。在来工法で使われる無垢材には、乾燥の度合いや強度が均等ではない為収縮し、そりや歪みが起こる為、扱いが難しく大工の腕が問われます。

一方、ツーバイフォーに使われる構造用製材は乾燥の度合いと強度が均等なので、熟練した技術がなくても扱いやすく、平均的な仕上がりになる良さがあります。

そしてその扱いやすさは工期にも影響し、在来工法の家よりも短い期間で新居が完成します。

在来工法とツーバイフォーのメリットデメリットの比較

在来工法のデメリット

在来工法とツーバイフォーの違いを簡単に比較した表です。

比較 在来工法 ツーバイフォー
間取りの自由度 高い 制限がある
リフォームの可能性 高い 内装の貼り替えなどはできるが、間取り変更は難しい
天井までの掃き出し窓など大きなサイズの窓を設けられる 最大限度サイズが決まっている
施工先 注文住宅を請け負う工務店 規格住宅を販売するハウスメーカー
費用 住宅性能や使う建材によって大きく変わる ・ハウスメーカーごとにある程度の価格帯が決まっている

・ハイグレードな規格住宅を建てるハウスメーカーでは、同程度の住宅性能と規模の在来工法の住宅より高額

・ローコストを謳っているハウスメーカーの規格住宅は低価格

 

「家族構成や家族の暮らし方に合う間取りにしたい」

「吹き抜けや大開口のある開放的な家にしたい」

「ライフステージの変化に合わせて手軽なリフォームで変えられる家にしたい」

というような希望がある場合には、在来工法の家が向いています。

「短い工期で完成させたい」

「家づくりのプラン作成にかける時間が十分にとれない」

という場合には、ツーバイフォーが向いているかもしれません。

家は長く住む場所です。そして理想の家を実現させる為には準備期間と施工を依頼する先との話し合い期間も含めると、数か月かかります。

予算に上限がなく、敷地の条件が整っていれば、希望に沿って計画は進められますが、現実には予算内で敷地の条件にあわせた計画を進めていくので、時間がかかります。

ただ、在来工法の自由度の高さは計画次第で予算内で希望の家を建てることに繋がります。

そしてこの時間が充実していればしているだけ家族の理想が詰め込まれた家になっていきます。時間がかかっても家族にぴったりな家を建てたいという場合には、在来工法での新築をお勧めします。

 

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著者情報

小谷 幸裕

小谷 幸裕マスダランドビル株式会社 代表取締役社長

資格:一級建築施工管理技士・二級建築士・インテリアコーディネーター
現場監督を経て住宅の高気密高断熱に対し技術職として
長く経験を積んでまいりました

2019年に代表取締役就任
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